連載 フロンティア・リポート[2]
質量分析で成分を「みる」—イメージング質量分析と質量顕微鏡
新間 秀一
1
1大阪大学大学院工学研究科生命先端工学専攻
pp.190-195
発行日 2016年2月15日
Published Date 2016/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1430200065
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はじめに
前回は成分を分析するための方法として「質量分析」の基礎から英国で開発された通称「iKnife」を利用した術中診断技術について紹介しました。最先端技術であるiKnifeによる術中診断は、試料を前処理することなく直接分析する非常に特殊な例です。
一方で、従来の質量分析では以下のような前処置が必要とされます。①試料をすりつぶし、②成分を溶媒で抽出、③抽出した成分が含まれる溶液を「精製」し、分析の邪魔となる生体由来の塩や夾雑物を除去する。これらの工程を経て、やっと質量分析ができるわけです。
しかしながら、この一連の工程で失われるものがあります。それは詳細な「空間情報」(point1)です。空間情報を得るためには、分子イメージングが必要になります。実は、質量分析には、得られた成分情報を詳細な空間情報としてマッピングするイメージング質量分析(imaging mass spectrometry;IMS)という新しい方法があります。
第2回となる本稿ではもうひとつの最先端質量分析技術である、IMSを取り上げたいと思います。筆者はIMS専用装置である「質量顕微鏡(iMScope)」という装置の開発に携わっていましたので、iMScopeの開発コンセプトから開発当時のエピソード、IMSの流れを説明します。そしてIMSは「どういう場面で使えるのか」という実際と、得られるイメージング結果の一例や将来展望まで紹介したいと思います。
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