ジェネラリストに必要な ご遺体の診断学・15
—ご遺体の検査❻—CT検査〈その2〉
森田 沙斗武
1
1大阪はびきの医療センター 臨床法制研究室
pp.732-735
発行日 2024年6月15日
Published Date 2024/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1429204853
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Case
患者:54歳、男性
既往歴:2型糖尿病、うつ病
病歴:妻、娘2人の4人暮らし。3年ほど前から2型糖尿病を指摘され、他院でインスリンを含めた治療を受けていた。しかし、好きな食事も食べられず、インスリン注射も苦痛で抑うつ症状が悪化したため自己中断していたという。
労作時の胸部不快感を主訴に当院循環器内科を受診した際、HbA1c 11.5%と血糖コントロール不良を指摘され、早急な血糖コントロールおよび循環器疾患の精査目的にて入院となった。患者はインスリン注射が再開となったことで非常に落ち込んでいる様子であった。
某日21時に消灯したのが最終生存確認。本来、2〜3時間ごとに看護師の巡回が行われることになっていたが、夜勤看護師は急変患者の対応に追われ、0時頃に行う予定であった巡回ができなかった。3時頃、巡回時に背を向けて寝ている患者を確認するも、声掛けや触診は行わず。7時頃、血糖測定のために訪室したところ、前回巡回時と変わらない姿勢で死亡しているのを発見。
7時10分心肺蘇生(CPR)の緊急コール。救急救命処置を試みるが、すでに死後硬直や死斑を認めたため蘇生は困難と判断。7時35分に蘇生処置を終了。8時15分、駆けつけた家族を待って死亡宣告とした。患者のベッドサイドには、他院で処方された向精神薬の空PTPシートを多量に認めた。
主治医は、病院責任者から病死なのか事件なのか問われたが判断がつかないため、CT検査をすることにした。その結果、明らかに死因となる所見はなく、やはり判断がつかなかった。病院責任者が異状死の届け出を行い、警察官に事情を説明し、ご遺体は警察に引き取られていった。
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