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Case
患者:67歳、男性。数年前まで母親と同居していたが死別し、以後、独居生活を送っている。姉が近隣に住んでいるが、患者が干渉を嫌うため、あまり連絡はとっていなかった。
既往歴:不明。親の資産で生活しているため仕事に従事しておらず、健診も受けていなかった。病院嫌いで医療機関の受診歴もなかった。
現病歴:朝8時頃、姉が実家の前を通りがかった時、玄関扉が半開きになっているのを不審に思い覗き込んだところ、玄関で倒れている患者を発見した。8時13分に119番通報、20分に救急隊が到着し心肺停止を確認、45分に当院へ搬送され心肺蘇生処置を行ったが、すでに死後硬直および死斑の発現を認め、58分に蘇生処置を中断、9時10分に死亡宣告を行った。病歴も生活習慣も不明で、死亡に至る経過が全くわからないため、「異状死の届出」を行ったところ、警察が来院しご遺体を引き取っていった。
翌日、姉が「病院で死亡診断書は発行できないのか?」と相談しに来院した。経緯を聞くと、警察の捜査の結果、事件性はないと判断され、警察医から「虚血性心疾患」を死因と記された死体検案書を受け取ったが4万円を請求されたという。「警察医は何の検査もしていないし、死因が何でもよいのであれば、病院で死亡診断書を発行してくれたらよかったのに」と訴えられた。なお、母親の死亡時に当院が発行した死亡診断書の発行料が3千円だったのを覚えていたため、相談に来たようであった。
姉に、「異状死の届出」が必要であったこと、その後は警察の取り扱いとなり手続きや書類については当院ではわからないことを説明した。当院から死亡診断書を発行できないことは納得していただけたようであったが、最後まで「何もせずに4万円は納得がいかない」と訴えておられた。
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