ジェネラリストに必要な ご遺体の診断学・10
—ご遺体の検査❶—後頭窩穿刺
森田 沙斗武
1
1大阪はびきの医療センター 臨床法制研究室
pp.92-95
発行日 2024年1月15日
Published Date 2024/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1429204639
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Case
患者:58歳、女性。母親と娘の3人暮らし。
既往歴:やや肥満体で高血圧症・脂質異常症を認め、かかりつけ医に通院中。5年前、頭痛時に撮影したMRIで脳動脈瘤を指摘されるも直径2.5mmほどであり、当院にて年に1度の画像検査を行っていた。
現病歴:某日、体調不良の訴えなどなく、いつもどおり生活していた。20時頃に夕食をとり、23時に自室で就寝した。家族も1時頃までにそれぞれ自室で就寝した。翌朝7時頃、患者が起きてこないのを不審に思った娘が寝室を見にいくと、ベッド横の床上に倒れているのを発見。7時10分に119番通報、18分に救急隊が到着し心肺停止を確認、45分に当院に搬送され心肺蘇生処置を行うも、すでに下顎硬直および死斑の発現を認め、55分に蘇生処置を中断、8時3分に死亡宣告を行った。
改めてご遺体を診察したところ、明らかな外傷所見を認めず、死斑は中等度に発現し圧迫により容易に消褪。硬直は下顎に軽度認めるものの、その他の関節の硬直は判然としなかった。顔面はうっ血し、眼瞼結膜に少数ながら溢血点を認め、口唇および四肢にチアノーゼ発現を認めた。生前の経過とご遺体に確認できた“急死の3徴候”から「急性死」と診断でき、脳動脈瘤の既往より「クモ膜下出血」が疑われたが断定できなかった。
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