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Case
患者:66歳、男性
既往歴:不明
現病歴:妻・娘・孫の4人暮らし。体調不良の訴えは特になかったが、元来肥満体で、健康診断では高血圧や脂質異常症などを指摘されるも放置していたという。
某日23時に寝室で就寝したのが最終生存確認。
翌朝6時に娘が、洗面所前の廊下でうつ伏せに倒れているのを発見した。娘は看護師であったため、急いで仰向けにし、呼びかけながら脈をとり、心臓マッサージを開始。6時6分に119番通報、15分に救急隊が到着し心肺停止(CPA)を確認、42分に当院搬送となった。心肺蘇生処置を続ける予定であったが、硬直と死斑が確認されたため、家族に断ってから処置を中止し、7時5分に死亡確認とした。
明らかな外傷はないものの、娘から死因について質問されたため、救命処置の一環としてCT検査を行うこととした。放射線科の責任者に「当院のCTはご遺体の検査をするものではない。保険請求できるのか」などと難色を示されたが、最終的に「CTによって異状死の届け出を判断する必要がある」と医療安全委員会の許可が下りたため、10時10分にCT検査を行った。両肺野に広範なすりガラス影を認め間質性肺炎ではないかと考え、放射線読影医に相談に行ったが「急性期の間質性肺炎にも見えるが、ご遺体の画像診断に責任がもてないから読影はしない」と言われた。
娘からの話によると、生前に発熱や呼吸困難の訴えもなく、臨床経過としては間質性肺炎ではないように思えた。CTで致命的な外傷がないことは確認できたものの、死因の判断ができず院外CPAであるため、結局異状死の届出を行った。
警察捜査によっても事件性なしと判断され、最終的に警察医によって「虚血性心疾患」と診断された。死因について、救急担当医としては納得できなかったがどうすることもできなかった。
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