ジェネラリストに必要な ご遺体の診断学・9
「死斑」を診る
森田 沙斗武
1
1大阪はびきの医療センター 臨床法制研究室
pp.1506-1509
発行日 2023年12月15日
Published Date 2023/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1429204602
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Case
患者:62歳、男性。妻と子どもと3人暮らし。60歳で退職後、趣味の山登りやキャンプに1人で出かけることが増えた。
既往歴:高血圧症
病歴:12月某日14時、キャンプ場に1人で到着。その後、1人でテントを設営したり、焚火で炊飯をしたりする姿をキャンプ場の利用客が目撃している。翌日の正午、利用時間終了のためキャンプ場職員が様子を見にいくと、テント内で寝袋の中で意識のない状態の患者を発見。動転したキャンプ場職員から、近隣の当クリニックに電話で連絡があった。とりあえず心臓マッサージをしながら救急車を呼ぶように指示したが、救急のある医療機関は遠く、ちょうどクリニックの休診時間帯であったため自らもキャンプ場に駆けつけた。
現場に到着すると、下顎硬直に加えて死斑の発現も認め、“死の確徴”があると考えられたが、冬季のキャンプ場で発見されていることから「低体温症」の可能性もあった。その場合、安易に死亡診断してはならないと考え、心臓マッサージを継続した。救急隊が心電図を装着し波形がフラットであることから、死亡と診断した。
その後、捜査に来た警察官やキャンプ場職員から、「本当に死因は低体温症だったんですか?」などと事情を聴かれたが、よくわからないと答えるしかなかった。後日、司法解剖となったと噂で聞いたが、詳細はわからないままであった。
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