特集 メンタルヘルス時代の総合診療外来—精神科医にぶっちゃけ相談してみました。
【各論2】総合診療医から精神科医への“ぶっちゃけ”相談集
Q1 なんとなく精神疾患かな? でも、どこがどういうふうに違和感があるのか、うまく表現できないです。正常と異常の区別がよくわからないです。「なんとなく違和感がある」をどう表現し、どうアプローチしたらよいでしょうか?
今村 弥生
1
1杏林大学医学部 精神神経科学
キーワード:
なんとなくの違和感
,
DSM
,
PIPC
,
MAPSO問診
Keyword:
なんとなくの違和感
,
DSM
,
PIPC
,
MAPSO問診
pp.974-977
発行日 2021年8月15日
Published Date 2021/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1429203310
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正常と異常の境界、つまり、診察室で患者から伝わってくる「違和感」が、精神疾患か否かの判断は、われわれ精神科医にとっても悩ましい臨床課題である。われわれの手元にはDSM(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders、現在は第5版。詳細は他稿を参照)などの、精神科領域に広く伝播した診断基準があり、精神疾患の診断と、主に研究上の議論のうえでの共通言語としては大変有用であるものの、臨床場面で「ある人」にDSM-5を使用するとなると、まずここに書かれている症候学から、それはどういう症状か具体的なイメージを持って、かつ目の前の人が訴える、あるいは醸し出す所見はその症候と合致するのかどうかを、頭のなかで照合しなくてはならない。これは精神障碍当事者と、ある程度の回数を治療者として対面していないと、患者のほうを診断基準に当てはめてしまい、患者の困難さと診断がずれていたり、症状しか見ていない、つまりは重要な問題が隠れたままの診断につながりかねない。千差万別の当事者の症状、その元にある苦悩のなかには、DSMでは測りきれないものもあり、かつ、精神疾患と非精神疾患の間にはまり込んだ微妙な境界を判断するのは困難であるが、その境界を含めて見ることは、相手を全人的に診ることになるとも考える。
本稿では自験例を交え、精神疾患かもしれない“なんとなくの違和感”の表現と、そのアプローチについての回答を求めてみたい。
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