早期膵癌のスクリーニングと診断へのアプローチ―膵嚢胞症例のスクリーニングによる早期膵癌診断

An approach for early diagnosis of pancreatic cancer. Following-up patients with cystic lesions in the pancreas.

要旨

　膵囊胞症例(分枝型Intraductal papillary mucinous neoplasmを含む)では膵液中に変異ras遺伝子が検出され，膵発癌高危険群となる可能性を考え経過観察を行ってきた．その結果，平均4年の経過観察期間中，197例中7例に膵癌の発生を認めた．膵癌発生は年率0.95%であり，国民衛生の動向・年齢性別膵癌のデータに基づく予測値0.042%と比べると有意に高かった．膵囊胞症例を拾い上げて効率のよいスクリーニング検査を行うことにより，今まで偶然に画像診断で発見されたり，または急性膵炎発症を契機に診断されていた早期膵癌の，発見が増加すると考えられる．