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Aliasing(折り返し現象)
カラードプラ法は,体内に照射した超音波パルスが体内から戻ってくる反射エコー信号の中から血流成分だけを抽出し,Bモード上に血流の方向や速度に応じた血流像を重ね合わせて表示したものである.血流成分の抽出は超音波パルスを同一方向に一定周期毎に繰り返し送受信(パルスドプラ法)し,反射エコーから固定成分をフィルタでカットすることで,ドプラ偏位成分として取り出すことができる.FFT表示では,血流のドプラ偏位周波数成分の分布がスペクトル表示されるが,カラードプラ法ではその平均周波数がカラー表示される.この際,超音波パルスの送信の間隔(周期)を長くしすぎると,速い流れからの大きなドプラ偏位周波数を正確に計測できなくなり,遅い流れに見誤ってしまう現象が起こる.これが折り返し現象と呼ばれるものである.この折り返し現象が起こり始める周波数はナイキスト(Nyquist)周波数と呼ばれ,その値はパルスの繰り返し周波数(PRF:PulseRepetition Frequcncy)の1/2である(PRFはパルス繰り返し周期の逆数).すなわち,最大検出周波数はPRF/2に制限されることになり,PRF/2を越えた周波数成分は,FFTのスペクトル表示上では反対向きの流れとして折り返って表示され,カラードプラ法においても色の反転現象として表示される(図1).
実際のカラードプラ診断装置ではモニター右上に上半分が赤色系,下半分が青色系のカラーバーが表示されているが,これが流速スケールで,たとえば両方向11cm/s (最大検出周波数を流速に換算した値)と表示されていれば,11cm/sまでの速度の血流が折り返しなく表示されることを示している.門脈を観察する時,流速スケールを6cm/sのように低くすると,折り返し現象のためプローブに向ってくる血流が青色に表示されることになる.したがって.正確なカラー表示を得るためには最適な流速スケールを選択することが重要であるが,このような状況下での観察において,異常に流速が速い病態(血管狭窄部末梢,A-Vシャントなど)では折り返しの現象の発生が逆に診断に役立つ(図2).
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