Letters to the Editor 編集委員会への手紙
本誌第2巻第1号の特集「早期胆嚢癌―最新の画像診断と治療」を読んで
真口 宏介
1
,
小山内 学
1
,
若井 俊文
2
,
渡辺 英伸
2
,
味岡 洋一
2
,
白井 良夫
3
,
畠山 勝義
3
,
藤本 武利
4
1手稲渓仁会病院消化器病センター
2新潟大学医学部第一病理
3新潟大学医学部第一外科
4平塚胃腸病院外科
pp.617-619
発行日 2000年9月15日
Published Date 2000/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1427900223
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本特集を楽しみにしていました.きれいな画像が多く,読み応えがありましたが,次第に不愉快になっていきました,理由は後述するとして,まず,今年の日本消化器内視鏡学会雑誌42巻2号の「編集あとがき」から論文執筆の心構えの一部を引用したいと存じます.これには「…先人の報告への敬意が払われているべきである.古来謂われる如くpriorityの尊重が為されなければならない.…」と記されており,心に染みる文章です.引用文献はこのように我用引水に偏らないよう心がけるべきであり,また文献を通覧すれば論文の品位が伺えるともいわれます.
さて,不愉快の理由を述べますと,それは,超音波診断に関わる複数の論文でこのpriorityが尊重されていないからです.以下具体的に指摘したいと存じます.
早期胆嚢癌の診断で超音波検査は中心的役割を果たしており,①胆嚢壁層構造の研究と,②膵胆管合流異常における胆嚢粘膜乳頭状過形成の検出に関する研究を除外してこれを語ることはできないと考えます.①では,胆嚢壁が3層構造を示す場合に第2層低エコーが組織学的に何に相当するかで,1986年に野口・相部ら1)と森田ら2)で相対立する解釈が提示され,現在,相部らの説(第2層低エコーが固有筋層のみでなく漿膜下層浅部の線維層を含むというもの)が多くの支持を得ています3,4).また,②で粘膜の乳頭状過形成がUS上の壁肥厚として描出可能であろうと予想したのは,1989年の土屋ら5)であり,これを成績としてまとめたのは1991年の五十嵐6)です.これらkey論文の紹介が不十分と考えます.
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