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膵胆道癌の(病理学的・臨床的)診断から(内科的・外科的)治療に関する国際学会が1999年2月4-5日に真冬のアムステルダムでありました.ダウンタウンから離れた“Academic Medical Center”が学会場となっていましたが,この巨大病院ではヨーロッパでの学術集会がよく開催されています.第1回目の集会は“Col-orectal Cancer:From Gern to Cure”というテーマで1995年に当地で開催され,今回は第2回目で膵胆道癌がテーマに選ばれ,欧州・米国を中心に疫学者,分子生物学者,病理学者,内視鏡医,外科医,放射線科医,腫傷医と世界中から講演者が招待されていました.会長はご当地のTytgat教授でした.プログラムを見ますと,日本人は小生と新潟大学第一病理の渡辺英伸教授の2人でした.知った顔振れは,膵臓病理のオマハのDr.Pour,キールのProf.Klöppel,放射線科ではボストンのDr.Ferruci,アムステルダムのProf.Reed-ers,内視鏡医ではご当地のProf, Huibregtse,ボストンのDr.Carr-Locke,膵臓外科ではウルムのPlof.Be-ger,ベルンのProf.Büchler,キールのProf.Kremer,ご当地のProf.Obertop,ルンドから最近ベルゲンへ移ったProf.Andrén-Sandberg,リバプールのProf.Neop-tolemos,ロッテルダムのProf.Jeekel,胆道外科はロンドンのProf.Benjaminらでした.
学会1日目の午後,渡辺教授は“Premalignant condi-tions and lesions”というタイトルで主に胆嚢癌のpathogenesisに関して,膨大な自験例をバックにした講演をされました.多くの発表者が教科書的な話,文献的考察を繰り返し話されたのとは全く対照的でしたので大きな反響がありました.前の演者が“胆嚢粘膜の腸上皮化生→癌化”とどこかの本から得たらしい話をした際に,渡辺教授が“胆嚢粘膜の胃粘膜化生→癌化”というご意見を披露して質問をされましたが,どうも誰もそのへんのご経験がないらしく返事に困っていました.そして渡辺教授の講演の中で“胃粘膜化生→癌化”や遺伝子異常に関するエビデンスが明らかにされますと座長も含め皆さん納得という態度を示されました.いずれにしましても600例以上の胆嚢癌の切除標本を基にしたという桁違いの膨大な研究材料に裏打ちされた発表ですので誰をも納得させる迫力に満ちていました.
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