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I.遺伝子ターゲッティンゲの理論と現状
培養細胞への遺伝子導入や受精卵への遺伝子注入により,細胞や動物個体へ組み込まれた外来遺伝子の効果を調べることによって,遺伝子の機能解析や病態モデルの作成などの成果が得られてきた。ところでこのような遣伝子導入にさいして,外来遺伝子は動物細胞や受精卵の染色体中のランダムな位置に組み込まれると考えられている。したがって,偶然に組み込まれた染色体の位置の周囲から影響を受けて発現状態などが変化する。また,挿入された位置に本来存在した内在遺伝子を分断することによる挿入突然変異を起こす場合もあり,単に外から導入した遺伝子が付け加わった以上の結果をもたらす場合がある。そして,そもそも内在の遺伝子を改変することはできない。
ところで,内在の遺伝子と塩基配列の相同性をもつ遺伝子ベクターを導入したときには,ある確率で染色体の相同な部分と組換えを起こして外来遺伝子が入り込む場合がある。この相同遺伝子組換えを利用すると,従来の細胞や受精卵への遺伝子導入と違って,内在遺伝子を人為的に思うままに改変して,その遺伝子の機能を壊したり,発現量や発現パターンを変更できる可能性がある。相同遺伝子組換えは酵母などでは高い確率で起きるが,残念なことに動物細胞で相同組換えが起きる確率は,導入された外来遺伝子の染色体への組込み全体の103~105回に1回であるとの報告が多い1)。
Mouse embryonic stem (ES) cells are pluripotent cell lines established from the inner cell mass (ICM) of blastocysts. They can be maintained in culture as undifferentiated cells with potency to differentiate into various types of tissue cells including germ cells in chimaeric embryos and mice when injected into host blastocysts. Such combination of unlimited proliferation potency in vitro and pluripotency of differentiation in chimaeric animals makes the ES cells a unique important tool of not only the analysis of embryogenesis but also the introduction of new genetic characteristics into the mouse germ line.
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