特集 図説 形態用語の使い方・使われ方
第Ⅱ部 検査手技・所見等の用語
c.病理・病変用語
悪性度(grading of malignancy)
下田 忠和
1
,
落合 淳志
1
1国立がんセンター中央病院臨床検査部
pp.411
発行日 1996年2月26日
Published Date 1996/2/26
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403104083
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腫瘍は良性から悪性まで様々な態度を示す.良性腫瘍とは局所で,多くは境界明瞭な発育を示し,浸潤あるいは転移を来すことはない.また発育速度も遅い.これに対し悪性腫瘍は浸潤性発育と転移形成を来すことが特徴で,一般的に発育は速い.これらの特徴の違い,悪性度を,まだ浸潤あるいは転移を来していない時期に,病理学的に判定することは極めて重要である.
悪性度の判定には組織ならびに細胞分化度(組織異型度),浸潤の程度,リンパ管あるいは静脈内侵襲度などが指標として用いられている.消化管の腫瘍では粘膜内に存在した癌の診断をめぐって,日本と欧米とで大きな相違が生じているが,これは粘膜内癌が浸潤癌でないことに起因している.この粘膜内癌の判定は構造ならびに細胞異型を指標とする組織異型度によって判定される.構造異型は腫瘍発生母地の構造とのかけ離れの程度で,消化管では腺管構造の異常として表現される.代表的なものは腺管内腺管(gland in gland,cribriform pattern,back to back),分岐異常,あるいは腺管吻合などである.細胞異型としては核/細胞質比(N/C ratio),核異型,核の大小不同,核の軸性の消失などが用いられる.それらの程度によって腫瘍は高分化,中分化,低分化に分けられ,一般的に分化の程度が低くなるにしたがって悪性度は高くなる.しかし消化管の癌では原発である粘膜内が高分化型腺癌であっても,浸潤部では低分化腺癌に変化することは,まれならず経験される.したがって悪性度判定には壁浸潤度,脈管侵襲などが重要な要素となる.
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