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膵管内乳頭粘液性腫瘍(intraductal papillary mucinous neoplasm : IPMN)は1982年に大橋ら1)による粘液産生膵癌の発表以来,わが国によってその疾患概念が確立され,世界的に広められた膵の腫瘍性病変である.その症例数の増加に伴い,さまざまな未解決な問題が生じてきた2,3).その中でも,最も臨床的に重要な問題のひとつに,“IPMNと通常型膵癌の合併”がある.IPMNの自然史がhyperplasia→adenoma→carcinoma sequenceであるとすると,過形成からIPMA(intraductal papillary mucinous adenoma)は前癌病変ということになる.しかし,現実の臨床の場では分枝型IPMNには経過観察が可能な症例がかなり多い.したがってその中で宿主の命を奪うものとしてのIPMN4),悪性化のpotentialを強くもっているIPMNのみを切除していくために,臨床家たちのさまざまな研究努力がなされてきた.その結果,わが国の集計5)やガイドライン6)に示されるように手術適応の基準がかなり明確になってきており,その基準を遵守し診療を進めることで多くのIPMNにおける診療上の問題点が解決されてきた.すなわち主膵管型の約80~90%,分枝型の約20%が悪性である.主膵管型は診断がつけば手術適応となる.分枝型の拡張分枝径(囊胞径)からみると,30 mm以上になると悪性の頻度が増す5).また,壁在結節の存在する症例,総胆管内透亮像や主膵管の狭窄・閉塞がみられる症例,年齢の高い症例に悪性が多い.膵管鏡の所見ではイクラ状腫瘍がみられる症例に悪性が多い.
しかし,この集計やガイドラインはさまざまな問題を提示した.とくに通常型膵癌の合併についてはIPMNの診療内容を大きく見直さなければならない問題を含んでいる.すなわちIPMNの切除標本を丹念に検索していくと,IPMNとは離れた部位に偶然に上皮内癌や浸潤癌が発見される症例があり,その合併頻度は約10%に認められるのである7~9).またIPMN切除後の残膵から通常型膵癌が発生する症例9,10)なども存在する.これらの事実はIPMNにおける通常型膵癌の合併頻度,発生部位,発生時期,検索方法など臨床的にいろいろな問題点を抱えていることを示している.通常型膵癌は小囊胞と合併して発生してくるのか,IPMNと離れた場所に存在するのか,あるいは近接して存在するときにはIPMN由来浸潤癌との鑑別はどのようにするのか,なども合わせて重要な問題となっている.
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