連載 原著・過去の論文から学ぶ・6
疾患概念の確立は症例報告から始まる—筋萎縮性側索硬化症と前頭側頭葉変性症—湯浅・三山病
吉田 眞理
1
1愛知医科大学加齢医科学研究所
pp.1087-1089
発行日 2024年9月1日
Published Date 2024/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1416202738
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はじめに
卒後研修を終えて2年目に脳神経内科医として赴任した病院で遭遇した症例を紹介する。数年前からうつ病として精神科に通院していた初老期男性が,嚥下障害をきたし脳神経内科に入院し,球麻痺型筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis:ALS)と診断された。全身のびまん性の筋萎縮を呈し,高度なⅡ型呼吸不全の状態でありながら,病棟内を徘徊し,頭部CTでは前頭葉萎縮を認めた。筆者は主治医ではなかったが,ALSに認知障害を伴う症例があることに強い衝撃を受けた。後日先輩の医師から,この症例は湯浅・三山病1-4)といわれる疾患ではないかと示唆され,原著をたどるとまさに同じ疾患と考えられた。湯浅・三山病は,筆者が神経病理学を学ぶ原点となった疾患である。本論では湯浅・三山病に関する本邦と欧米の原著をたどりたい。
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