- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
Lapidous R: De L'allochirie: Thèse pour le doctorat en medicine. Jouve et Boyer, Paris, 1899(Fig. 1)
知覚対側転位/知覚転位(allochiria)
知覚対側転位/知覚転位(以下知覚対側転位)は,体の片側に与えた感覚刺激を刺激の反対側の同部位に感じるという実に奇妙な現象である(Fig. 2)1,2)。この症候を初めて診たのは1981(昭和56)年であった。千葉大学神経内科の病棟が開設されたのが1978(昭和53)年10月で,その創設と同時に入局した筆者はまず大学病院で2年間病棟受け持ち医としていろいろな神経疾患を経験し,その後やはり開設して間もない千葉県救急医療センターに1年後輩の同僚と一緒に赴任した。
この病院は脳疾患と循環器疾患にほぼ特化した3次救急病院であり,脳神経内科医の赴任は初めてであったが,脳神経外科医は既に4人いた。病院にⅩ線CTはあったが,MRIはまだなかった。救急車で運ばれてくる患者の多くが脳出血であり,知覚対側転位は脳出血123例中20例にみられ,その多くが右被殻出血であった。東京都と千葉県を結ぶ湾岸道路ができた頃でもあり,交通外傷特に頭部外傷が多く非常に多忙であったが,大学ではまったく経験することのなかったさまざまな神経疾患症例を次々に経験することができ毎日の診療が楽しく,充実感でいっぱいであった。その後,この病院での臨床経験をいくつも論文にすることになるのだが,振り返ればそれはひとえに恩師平山惠造先生をはじめとした多くの医局メンバーの指導やサポートのおかげであり,いま改めて感謝の念を強くしている。
Copyright © 2024, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.