連載 臨床神経学プロムナード—60余年を顧みて・14
視覚性運動失調(ataxie optique〈F〉)をめぐって:(1)実体験 (2)本邦紹介 (3)エピローグ
平山 惠造
1,2
1千葉大学(神経学講座)
2日本神経治療学会
pp.404-405
発行日 2022年4月1日
Published Date 2022/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1416202052
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(1)実体験—読むと体験との違い
Ataxie optique〈F〉は1967年にGarcin教授ら1)により報告された。これはoptische Ataxie〈D〉(古くから知られたBálint症候群の一要素)とは異なる(説明省略。拙著参照2))。日本語では両者とも「視覚性運動失調」であるので,ataxie optique〈F〉を筆者は日本語では「視覚性運動失調(Garcin型)」と称している。
Ataxie optique〈F〉は,(Bálint症候群のそれとは違い)患者の視力,視野,物体認知,言語理解などに異常はなく,また上肢の運動機能にも障害がないにも拘わらず,眼前の中心視野から少し外れた視野で物を手で捕えようとすると,手が目的からずれてそれを捕らえられない(捕え損なう)。皿の上の料理を食べるのに,その脇に置かれたフォークを視線を向けて見なくては取り損なう。Garcin先生がこの論文を発表されたのは1967年であった。筆者はそれより前にフランス政府給費留学生として先生に師事したが(1962〜1964年),その後のことであったので,それを見る機会はなかった。先生の論文には,診察手技が写真でも示されていたが,その実際を十分には把握し難かった。
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