Modern Therapy 産科劇症の治療
特集コメント
エピローグ的コメント
小林 隆
1
1日赤医療センター
pp.68
発行日 1980年1月10日
Published Date 1980/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409206181
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罹患や経過の模様が極めて慢性的で,時には生涯にも及ぶ疾患,例えば糖尿症,慢性関節リューマチ,結核,精神病は申すに及ばず,慢性病になりやすい腎や肝の疾患を思うとき,産婦人科疾患の経過の短さ,転帰の早さは誠にきわだっており,年余に及ぶ入院治療など考えられないことである。このような慢性内科疾病から見ればほとんどすべての産婦人科疾患は相対論的には劇症的なプロフィルを持つといえないことはない。それだけに診療においては即戦即決,怪刀乱麻を断つといったハイレベルの診療能力が求められ,われわれみずからも,危機一髪的な救急,救命の成功にプロフェッショナルな満足と自負を感じつつ毎日を送っているのではあるまいか。その反面,飛ぶ鳥を射る難しさ,予見性が乏しい突発的な現象,その激しいダイナミズムに対する微調節の至難さなどを前にして,われわれの治療的介入の限界をまざまざと感じることが多いのである。それのみならず,このような劇症の本態論に関する第三者の理解の困難さ,乏しさから産婦人科医は苛酷にも医療紛争の被告人として法延に立たされる頻度が他科を凌ぐという皮肉な結果を招くことにもなるわけである。劇症に関連するこのような情けない問題をわが領域としては将来どのように解決するかということは,わが科の繁栄や後継者をリクルートする立場からもなおざりにはできない問題である。
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