欧米病院偏見旅行記・12
エピローグ—病院のたましい
pp.55
発行日 1968年12月1日
Published Date 1968/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541203516
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ホノルルの真っ青な海を眼下に,日航機はすべるように東京を目ざす。何よりも日本語でアナウンスのあるのがありがたい。もう注意して聞き耳を立てる必要もない。なんと抵抗なく耳にはいってくることか。ボンヤリしていると駆け足で巡った39か所の印象がよみがえってくる。
それぞれに忘れがたいが,なんといっても圧倒的な印象は,いったい近代病院はどれだけ金がかかるのか,というとまどいに似たものであった。1床あたり2000万の建設費というと,500床で100億円必要なのである。運営費も,スウェーデンで1日1万4000円とか,アメリカの2万5000円とか,物価の差,所得水準の差を考えても,口惜しさと,いらだたしさでアタマにきてしまう。ああ,もしこれだけ使わせてくれたらなと思い,これでは日本の病院はまたまた引き離されるのではないかとのいらだちである。しかもアメリカの病院運営費は毎年15%も上昇するというではないか。いったいこれからどうなるのか。近代病院サービスは,金持ち国でなければ無理なのか。金,金,やっぱり金の差なのか。
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