連載 スペシャリストが薦める読んでおくべき名著—ニューロサイエンスを志す人のために・2
統合失調症のモデル動物で検証すべきこの疾患の本質とは何か
加藤 忠史
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1順天堂大学大学院医学研究科精神・行動科学
pp.1168-1169
発行日 2021年10月1日
Published Date 2021/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1416201908
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神経科学領域では,最近,精神疾患の動物モデルの研究が盛んになってきた。
最初のブレークスルーとなったのは,おそらく自閉症のモデルマウス(Nakatani et al, Cell, 2009)だったと思われる。このモデルマウスにおいては,自閉症で最も多く見られる染色体異常である15q11-13をマウスで再現したうえ,行動解析により,当時自閉症の3主徴とされていた,「社会行動の異常」「こだわり」「コミュニケーションの障害」を示した点が画期的であった。現在では,疾患名は自閉スペクトラム症となり,診断基準のまとめ方も,「社会的コミュニケーションおよび対人的相互反応における障害」および「限定された興味」の2つに変わったが,このモデルが疾患の本質を捉えていたことは間違いなく,自閉症という,それまで動物で再現することは難しいと思われた疾患のモデルマウスの作製が可能であるということを示した点で意義があった。
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