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第4回欧州脳卒中学会(4th European Stroke Organisation Conference:ESOC 2018)は5月16〜18日にスウェーデンのヨーテボリで開催されました。本学会は世界脳卒中機構(World Stroke Organization:WSO)の下部組織に位置づけられる欧州脳卒中機構(European Stroke Organisation:ESO)が設立した年次総会であり,まだ歴史は浅いのですが年々参加者と演題数が増加しています。今回は,欧州のみならず世界中の90カ国から4,300名以上の参加者があり,約1,900演題が採択され,発表されました。私もESOのFellow(FESO)を務めている関係で30演題以上の査読を担当しましたが,毎年応募演題数が増加しているのを実感しています。学会場に貼り出された一覧表で確認した日本人の参加者は37名でした。会場はSwedish Exhibition&Congress Centerという大きなコンベンションセンターでした(写真1)。海外の学会でいつも感じることは参加者の男女比率の内外較差です。この学会でも参加者の半数は女性でした。世界的にみれば日本の学会参加者の男女比が異常なのかもしれません。日本でも以前に比べ医学部も女子学生がずいぶん増えているはずなのに学会参加者にはそれがあまり反映されていないように思われます。ガラパゴス化が嘆かれている日本の現状を反映する特徴の1つと言えます。
学会は初日から多くの重要な大規模臨床試験の成績が発表され,その多くが『NEJM(New England Journal of Medicine)』誌に同時掲載されました。私はこのうちの2つの臨床試験の共同研究者(国内代表者)であり,共同演者と共著者でもあったので多忙な1日を過ごすこととなりました。1つは発症後7日以内の一過性脳虚血発作(transient ischemic attacks:TIA)と軽症脳梗塞を対象とした国際共同研究による前向き観察コホート研究であるTIAregistry.orgの5年追跡調査の結果です。本研究の1年追跡調査の結果は2016年の本学会で発表され,そのときも同時に『NEJM』に掲載されました。この報告ではガイドラインを遵守した脳卒中専門医による急性期TIAの診療が1年間の脳卒中再発率を10年前に比べて半減させることを示すことができました。しかしながら,今回の研究により1〜5年後までの脳卒中の累積発症曲線はその後減衰することなく直線的に推移していたことから,脳卒中の残余リスクにはより厳格かつ強力な対策が必要であると考えられました。TIAの危険因子,画像,病型には人種差がありますが,アジア人のサブ解析の結果は『Stroke』誌に発表しており,日本人のサブ解析の結果については現在投稿準備中です。もう1つは,潜因性脳塞栓症(embolic stroke of undetermined source:ESUS)に対する直接的経口抗凝固薬(direct oral anticoaglants:DOAC)のリバーロキサバンとアスピリンの有効性と安全性を比較する介入試験(NAVIGATE ESUS)です。既に本試験は中間解析の結果に基づき昨年10月に症例の追跡調査が中止されていました。リバーロキサバンはアスピリンを上回る脳卒中再発予防効果が示されず,出血合併症がアスピリンより多く発症してしまったことからリバーロキサバンの有用性を示すことができませんでした。日本からも国別で最も多くの症例を登録していただいたのに残念な結果でした。本試験結果は,ESUSの病態は多様であり,画一的な治療ではなく病態に応じた再発予防対策が必要であることを示唆しています。そのような観点から本研究班のPublication Committeeでは今後多くのサブ解析を予定しています。本学会でも早速卵円孔開存(patent foramen ovale:PFO)のサブ解析結果が3日目に発表され,PFO合併例ではアスピリンを上回るリバーロキサバンの有用性が示唆されました。私は日本人に多いbranch atheromatous disease(分枝粥腫病)のサブ解析結果を10月17〜20日にモントリオールで開催される世界脳卒中学会(11th World Stroke Congress:WSC 2018)で口演発表する予定です。なお,ESUS患者においてもう1つのDOACであるダビガトランとアスピリンを比較するRE-SPECT ESUSの結果もWSC 2018で発表予定です。
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