Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
Ⅰ.症例提示
症例は独居でADL(activities of daily living)が自立した82歳女性である。既往歴として高血圧,変形性膝関節症があり,家族歴,生活歴に特記事項はない。2016年7月某日(第1病日)頃から食思不振がみられた。第7病日に自宅で倒れているところを発見された。近医で治療を受けたが意識清明でないため第8病日に当院へ救急搬送された。意識レベルJCS(Japan Coma Scale)1,GCS(Glasgow Coma Scale)15,体温38.2℃で,明らかな髄膜刺激症候はなかった。そのほか,一般身体所見に特記事項はなかった。検査所見では,白血球6,900/μL(好中球84%),CRP(C-reactive protein)0.45mg/dL,プロカルシトニン0.06ng/mL (基準値0.05ng/mL未満) 以外に特記すべき所見はなかった。頭部MRI(magnetic resonance imaging)(Fig. 1)の拡散強調画像で左視床,左内包後脚に高信号域,FLAIR(fluid attenuated inversion recovery)画像で第4脳室周囲の脳幹・小脳,左大脳脚,左視床,左内包後脚,大脳白質に高信号域を認め,急性期脳梗塞と診断し,治療を開始した。細菌感染症の合併も考え,血液培養提出後,セフォゾプラン2g/日も開始した。その後,39℃台の発熱,意識レベルの悪化を認めた。第10病日に脳脊髄液検査を行い,細胞数94/μL,蛋白53mg/dL,糖62mg/dL (血糖値138mg/dL) であった。第11病日に血液培養の結果が判明し,リステリア菌が検出されたためリステリア脳幹脳炎(髄膜脳炎)と考え,アンピシリン12g/日で治療を開始したが,薬疹を生じたため,メロペネム6g/日へ変更した。第19病日の造影MRI(Fig. 2)で一部病変の増強効果を認めた。左大脳脚や延髄背側にリング状増強病変がみられ,前者は拡散強調画像でもやや高信号を呈していた。治療により改善を認め,3週間で抗菌薬投与を終了した。廃用症候群を生じたため回復期リハビリテーション病院に転院となった。
Copyright © 2018, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.