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今般,松岡洋夫教授,上埜高志教授,齋藤秀光教授のご努力により『臨床脳波学』が17年ぶりに改訂・出版された。故・大熊輝雄先生が原著者の本書は,日本の脳波診断学を高い水準に引き上げた名著である。20世紀の終わりに出版された第5版が最終版と思っていたので,今回の出版は大いに感激するとともに驚きもあった。「まえがき」を読むと,大熊先生は2005年に東北大学の後輩3教授に本書の改訂を依頼され,2010年に逝去されたとのことである。1963年に出版された本書の初版には,秋元波留夫先生が序文を寄せて,「脳波の歴史はまだ大変に浅いが当時の知見を集大成した力作である」と書かれた。その後,大熊先生はお1人で臨床脳波学に関する国内外の膨大な知見を網羅し,およそ10年単位で4度にわたって改訂し,36年間にわたるご努力で重厚な教科書を作られた。その大熊先生に後事を託された3名の精鋭教授が21世紀に『臨床脳波学』をよみがえらせたわけである。
『臨床脳波学 第6版』では,これまで「臨床編」と「応用編」の2編(25章)であったものを,「総論」「疾患編」「応用編」「基礎編」の4編(24章)にわかりやすく改編した。また,統合失調症,認知症,知的障害などと名称変更された疾患も少なくなく,学会名も「臨床神経生理学会」となったため,これらを更新・統一している。そして新しい知見を追加するとともに,古い内容を削除して全体の頁数を変えない工夫がなされている。引用文献を残すものと削除するものに仕分け,新たな文献を追加する作業だけでも大変な努力であったと推察される。削除された章はMEや電気の基礎知識に関するもので,臨床工学技士や臨床検査技師が専門とする領域である。医師はこれらの専門家と協力・分担して神経生理学の臨床を行う時代になったと言えよう。
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