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7月はじめは西日本では梅雨のまっただ中であり,私の奉職しております山口県では数年に1度,とんでもない土砂災害が起こります。今年は九州北部が梅雨前線の標的のようですが,油断できない日々がしばらく続きます。もう1つ,この時期は特定疾患継続申請書類の季節でもあります。かつては机の上にうず高く積まれたカルテと,“7月○日までにお願いします”という医事課からの付箋を前に,診療時間終了後の誰もいない外来診察室で1枚1枚空欄を埋めていたものですが,医師不足のかけ声とともにここ数年でこういったペーパーワークの支援体制が充実し,電子化された情報をほとんど追認するだけで継続書類が書けるというありがたい時代になっています。神経内科は脳卒中,てんかん,頭痛,認知症などのcommon diseaseを対象とする実に多忙な診療科で,決して変性疾患を含む難病ばかりを診ているわけではありませんが,いまなお私たち神経内科医は“治らない病気ばかりに興味のある変わり者の集団”と評されることしばしばです。私はこの風評を払拭すべく,学生諸君には,神経内科は治せる病気が沢山あること,神経内科の臨床は幅広い内科の知識を駆使しないと成立しないこと,いま流行の総合診療科に最も近い仕事をしている診療科は神経内科であることなどをことあるごとに話しています。しかし,56特定疾患のうち3割が神経内科固有の疾患であり,神経内科医が関わる疾患は特定疾患全体の実に過半数を超えること,そしてこの書類の山の大部分と,厚生労働省・地方自治体の難病行政の大きな部分に私たちが関わっているということ:やはりわれわれは希少難病を診なければならない診療科なのだ,という自覚を再確認する1カ月間でもあります。
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