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はじめに
パーキンソン病(Parkinson's disease:PD)は神経変性疾患の中でも頻度が高く,かつ,人口の老齢化に伴い有病率が増加することが知られている。PDの運動症状が発現する以前から神経病理学的変化は生じており,PDの運動症状発現時には中脳黒質緻密層(substantia nigra pars compacta:SNc)の神経細胞数は,諸説あるものの既に40~60%前後まで減少しているとされる。Fig.1には多くの神経科学者が想定している神経細胞数とPD症状発現に関する図のうちDeLongらの例を示す1)。Fig.1に示す経過図は,主としてPDの運動症状についての想定であるが,近年のBraakら2)の仮説とPDの運動症状に先行する非運動症状との関連において,よく合致することが認識されている。すなわち,Braakらによれば,PD発症はアミン系作動神経である末梢自律神経,もしくは嗅神経のαシヌクレイン関連病理の発現を起源としている(Fig.2)。なお,BraakらはこのPD病変の進展様式を検討するうえで,認知症がみられる症例は除外している。そのため,いわゆるDLB(dementia with Lewy bodies)で想定される皮質から脳幹へ下降するような病巣の進展については述べていない。
本稿は,Delongの図とBraakの仮説から想定される,PD発症前診断とPDの発症前もしくは早期治療の可否を命題とされている。他稿に述べられているように,それぞれの症候や検査所見からPDの早期診断はある程度可能と考えられるが,PDの確定診断については現時点では困難であると言わざるを得ない。臨床的にPDの4主症状を認め,PDと臨床診断し,L-dopaへの反応が当初よくても,経過を追ううちにほかのパーキンソニズムをきたす疾患であると臨床診断を訂正することも時に経験する。しかし,PDの発症を抑制,あるいは病状の進行を緩徐にする方策を講じるにあたっては,運動症状発現以前になんらかの介入をすることが必要である。では,実際の臨床ではどの時点でいかに介入すべきであろうか? 介入時期を考えるためには何を知っておく必要があるだろうか? 1つにはPDの自然史を理解しておくことが必須であるように思う。そして,介入を行った際の効果判定にも,PDの自然史を理解しておくことが必要である。PDの自然史は,薬物療法や生活環境などが時代によって変化している。そのため,どの時代におけるどのようなPDの自然史であるかが問題となる可能性がある。ここではまず,PDの自然史について利用可能な最近のデータを示し,バイオマーカーとしての非運動症状(non-motor symptom)について考案する。
Abstract
Parkinson's disease (PD) is the second most common neurodegenerative disorder. The risk of developing of PD increases with age,it is estimated that the prevalence rate is approximately 150/100,000 in Japan. Recently,non-motor symptoms such as anosmia,autonomic failure,sleep disorders,sensory problems,depression,anxiety,cognitive disorders (including dementia),and psychosis are interested in the pathogenetic process of PD. According to the Braak's hypothesis,these non-motor symptoms precede the onset of the classic motor symptoms of PD. Many studies have shown that the number of neurons in the substantia nigra is decreased to approximately -40 to -60% in number when the motorsymptoms of PD are developed. In this article,review of special references regarding the natural history of PD shows that non-motor symptoms are the prodromal signs of PD. If disease modification therapy and/or disease prevention therapy is approved in the future,an early and accurate diagnosis of PD is needed. Accurate early diagnostic biomarkers including symptoms,some compounds,and radiological markers need to be identified.
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