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本号の特集においては,辺縁系脳炎についての6本のいずれ劣らぬ玉稿が揃った。この辺縁系脳炎という概念は,近年大きなパラダイムシフトがあった。湯浅龍彦先生らの「辺縁系脳炎―歴史,症状,最新分類」は,そのところを精緻な論考でお示しになった。また,著者自身の経験を踏まえ,2010年の改定案を提示された。それによると第1項ウイルス性辺縁系脳炎,第2項自己抗体介在性辺縁系脳炎,第3項自己免疫疾患に関連する辺縁系脳炎,第4項疾患の位置づけが不明な辺縁系脳炎に分類した。これは今後各方面に大きな影響を与えるとともに,読者に資するところが大変大きいと思う。高橋幸利先生らは辺縁系脳炎とグルタミン酸受容体抗体についてお書きになった。非ヘルペス性急性辺縁系脳炎は年間550人の発生があると考えられるが,抗GluRε2抗体はその約60%にみられるという。また陽性群では初発神経症状として言動の異常,陰性群では痙攣が多かったという。最近注目されている抗NMDA受容体複合体抗体についても論述されている。山本知孝先生らは抗Ma2抗体陽性脳炎と辺縁系についてお書きになった。抗Ma2抗体陽性脳炎は早期に反応する症例が少なくない点が重要なポイントである。臨床症状,病理変化,予後などについて自験例をまじえて詳しい総説をお書きになった。
庄司紘史先生は非ヘルペス性急性辺縁系脳炎(NHALE)の臨床をお書きになった(ただし,庄司先生も書かれているように,NHALEあるいはNHLEはわが国で汎用されているが,国際的には認知されていない)。これはヘルペス脳炎,傍腫瘍性辺縁系脳炎とオーバーラップする病態があるが,特にNHALE,抗NMDA受容体抗体陽性脳炎の3自験例を中心に臨床,後遺症などを詳細にお書きいただいた。吉川哲史先生は小児だけでなく,成人でも中枢神経病原性について注目されているHHV-6脳炎の病態と臨床,脳波などについてお書きいただいた。
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