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あとがき
作田 学
pp.1030
発行日 2011年9月1日
Published Date 2011/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1416101019
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近年論文を書かない傾向がとみに顕著になっている。日本神経学会の総会を見れば,昔に比べて倍近い数の発表があり,決して書くべき研究成果がないわけではない。『臨床神経学』『脳と神経』『BRAIN & NERVE』の編集委員をこれまで4半世紀以上続けてきた経験からすると,ただ単に論文を書かないということのようで,日本語の論文ではなく英語の論文を書いている,ということでもなさそうだ。論文を書かないということにおいては私自身も人後に落ちないほうであるが,自戒の意味も含めていかに論文を書くか,を考えてみたい。
論文の書き方を系統的に習う機会が少ないことが論文を書かない第1の原因と言われることがある。しかし,私がある病院の部長をしていた頃は,私自身は何も教えなかったが,そこでは医局員の切磋琢磨があり,ごく自然に日本や米国の雑誌に論文が次々に掲載された。ある医局員は米国の雑誌にrejectされたにもかかわらず,粘りに粘り,とうとうヨーロッパの雑誌に掲載されたこともある。しかしながら,最近はいったんrejectされると,2度と書かない,あるいはrejectされるのが嫌で書かないということもあるようだ。論文がrejectされるのは,何も人格が否定されたのでもなんでもない。その雑誌には合わないということだけだ。落とされても落とされても這い上がるというチャレンジ精神は大切である。
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