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今月号は片頭痛の予防療法という興味深い特集号になった。本号をご企画いだいた北里大学濱田潤一先生に感謝を申し上げたい。本特集の冒頭では「片頭痛の予防療法のオーバービュー」を東京女子医科大学の清水俊彦先生にご執筆いただいた。必ずしもすべてが対照例を置いておらず,また片頭痛のプラセボ効果も時に40~60%の場合があるので難しい。しかし,今後このいくつかがより正確に評価されるようになるだろう。続いて「抗てんかん薬による片頭痛の予防療法」は本号のご企画者である濱田先生の手による論文である。予防療法が必要になる場合として9条を挙げているが,これらはいずれも納得できるものである。またVPA,TPMなど有効とされているものが,いずれもNaチャネル阻害薬であることが興味深い。PHT,CBZといった日常で広く使われている薬剤はいずれもNaチャネル阻害薬であり,これらの効果も興味がある。慶應義塾大学の清水利彦先生には,古くから使われているβブロッカーについてご執筆いただいた。米国のガイドラインでは特に,プロプラノロールは十分な予防効果があるとされている。東海大学の永田栄一郎先生には抗うつ薬による予防療法についてご執筆いただいた。以前は頭痛というと,鎮痛薬と精神安定薬が日常的に処方されたが,アミトリプチリンのエビデンスがAであるという。しかし,大多数の抗うつ薬は効果がないようである。カルシウム拮抗薬による予防については,山口大学の根来 清先生にご執筆いただいた。たしかにどのようなカルシウム拮抗薬でも服用を始めると自然に片頭痛が起きなくなってしまう。この機序について詳しく述べられている。本特集の最後は鳥取大学の竹島多賀夫先生による「メタボリックシンドローム治療による片頭痛の予防」である。興味のあるテーマだが,動脈硬化症が起こる40~60歳にかけて,徐々に片頭痛が減少していくこととの整合性はどうなのだろうか。今後の検討が待たれるところである。
総説欄では,久留米大学の山中龍也先生が「標準治療抵抗性中枢神経系原発悪性リンパ腫に対する薬物療法」についてご投稿いただいたが,この治療法ほど近年進歩しているものは少ない。そのいろいろの治療法と成績について詳述されており,今後の臨床に大いに役に立つに違いない。
このほか,症例報告として,「伝導失語を呈した交差性失語の1症例」,「くも膜下出血を伴わず被殼出血のみで発症した破裂中大脳動脈分岐部動脈瘤の1例」,「Infundibular dilatationから発生した小動脈瘤が出血源であったくも膜下出血の1例」の3本が掲載された。
このヒトに聞くでは,高垣玄吉郎先生に本誌編集委員の高坂新一がお話を伺った。「神経学史逍遥記」と題して先生の有名なグルタミン酸研究,各国の図書館事情などをお話しいただいた。
今月号も実に充実した号となっている。
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