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今月号は脳画像の最前線を特集した。片田和廣先生はマルチスライスCTの神経疾患への応用を寄せられた。3D-CT angiographyは,既に脳動脈瘤の診断にはなくてはならない地歩を占めている。大動脈弓部からウイリス動脈輪までの画像が,わずか6.9秒の時間でスキャンできるとは驚きであり,さらに256列面検出器CTによる美しい画像は,今後の応用が期待される。渡辺英寿先生は,光トポグラフィーによる脳機能の計測について書かれた。これは近赤外線を使用し,脳の活動を明らかにするものであり,特にてんかん焦点の同定が興味深かった。青木茂樹先生らは神経疾患と拡散tractographyをご寄稿いただいた。4年ほど前から実用に供されている画像だが,場合によっては息を飲むほど美しい像を提供している。松末英司先生らは高磁場MRIと神経疾患についてお書きになったが,3テスラで1万例以上の症例の蓄積を披露された。特に図3は脳解剖図を彷彿とさせる見事さである。松田博史先生は神経疾患とSPECTについてお書きいただいた。特にご自分が開発され,現在の主流になっているeZISについて,多数例を示された。百瀬敏光先生は神経疾患のFDG-PETと神経伝達機能イメージングについてお書きいただいた。先生のライフワークとも言える領域で,お聞きするたびに進化している様子が目に浮かぶようである。放射線薬剤も主なものだけで,14種類にも及び,特にパーキンソニズムの鑑別診断はすばらしい。
出澤真理先生は骨髄間葉系細胞を用いた筋ジストロフィーへの再生医療の可能性と題した総説で,新たな治療法の方向を打ち出された。ただし,筋ジストロフィーではジストロフィン遺伝子など,機能を欠失している遺伝子を何らかの方法で補う必要があるとされた。西村幸男先生らには皮質脊髄路損傷後の手指の巧緻運動の機能回復メカニズムという総説をお寄せいただいた。たとえ皮質脊髄路が損傷を受けても,それと平行して下行する経路を合目的的に駆動するリハビリテーションが大切であることをお示しになった。
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