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今月の特集は特発性正常圧水頭症(iNPH)である。北野病院の石川正恒氏によると,その診察基準として日本のガイドライン(2004年)と国際診療ガイドライン(2005年)の2つがあるが,日本のガイドラインの優秀性が示されている。国際診療ガイドラインは発症年齢が40歳以上と,比較的若年でもよいとしており,むしろlong standing overt ventriculomegaly in adult(LOVA)を念頭に置いているが,LOVAとiNPHはまったく違う病態であると,論旨の展開もわかりやすい。東北大学の森 悦朗氏は,iNPHでみられる歩行障害について述べている。特徴は通常の歩行失行と比べ,平衡障害も顕著にみられるとし,発現機序に関しては,前頭葉機能障害としている。
大阪大学の数井裕光氏は,特に認知機能障害の面を詳しく述べている。アルツハイマー病と対比することで,いずれも精神運動速度と注意機能の障害は強いが,エピソード記憶と意味記憶の障害が軽度であればiNPH,逆であればアルツハイマー病を疑うとした。そしてiNPHではシャント術後に記憶障害と精神運動速度の低下,作動記憶の障害,視覚構成機能障害などが改善しやすいとした。東邦大学の榊原隆次氏らは,排尿障害について述べている。NPHの排尿障害の中で頻尿・尿意切迫感(OAB)は早期症状として注目される。NPHの排尿障害の病態機序としては,右前頭葉の血流低下などによる排尿筋過活動と二次的な機能性尿失禁の両者が働くとした。岩手医科大学の佐々木真理氏らは画像診断について述べ,日本で注目された高位円蓋部くも膜下腔の狭小化とSylvius裂・基底槽の拡大に関しても,考慮すべきであるとした。治療の面では公立能登総合病院脳神経外科の橋本正明氏が,golden standardとしてのシャント手術は揺らぐことはないとしている。
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