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はじめに
パーキンソン病はイギリスの開業医James Parkinsonの1817年の著書,「An Essay on the Shaking Palsy」1)に最初の記載があるとされる。後にフランスの神経病理学者Jean Martin CharcotによってParkinsonの名を冠して,パーキンソン病と呼ばれるようになった。神経変性疾患の中でアルツハイマー病に次いで2番目に多く,固縮,振戦,無動,姿勢反射障害などの運動症状を中心に,さまざまな自律神経症状,精神症状を特徴とする(Fig.1)。多くは老壮年期に発症し緩徐進行性で,対症療法はさまざまあるものの現在のところ原因は不明であり,難病とされる。病理では黒質のドーパミン神経の減少を特徴とし,大多数のものではエオジン好性のレビー小体といわれる細胞質封入体を認める(Fig.2)。黒質のドーパミン減少がいかにして運動症状の出現につながるかは,大脳基底核の回路仮説がよく説明に用いられる。
まず線条体でドーパミンが欠乏すると線条体から淡蒼球外節に至る抑制性の神経細胞が興奮し,淡蒼球外節は抑制される。すると視床下核が脱抑制され,淡蒼球内節および黒質網様層が過剰に興奮し視床への抑制が過剰になる。結果,視床から大脳皮質に至る経路が過剰に抑制され,無動が生じるとされる2)。しかしこの回路仮説でうまく説明できる点もあれば矛盾する点もあり,まだ病態生理に関してもさまざまな議論が必要な点であろう。ほかに延髄青斑核のノルアドレナリン神経,心臓交換神経節なども神経細胞死を起こしている。ほとんどが孤発性であるが数%家族性のものがあり,後者についてはα-synuclein,Parkin,PINK1,DJ-1,LRRK2,ATP13A2など多数の原因遺伝子が同定されつつある。主な家族性パーキンソン病の原因遺伝子をTable1に示す。
現在までさまざまなヒトあるいは実験動物での知見を基にして,いくつかの発症機構に関する仮説が立てられており,ここではそのうちで有力と思われる仮説を中心に,最近の報告も織り交ぜながら述べてみたい。
Abstract
Parkinson's disease (PD) is the second most common neurodegenerative disease. It is associated with the degeneration of dopaminergic neurons in the substantia nigra pars compacta and other areas of the brain. The pathology of PD is characterized by the accumulation of a cytoplasmic fibrillar structure,wherein α-synuclein is the major component. Most occurrences of PD were believed to be sporadic and associated with aging and environmental stress. However,there is now strong evidence for genetic inheritance in a small number of families. Although the pathological mechanisms of PD are still largely unknown,we present the major hypotheses and discuss the future directions of studies in this area.
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