特別企画 Master's Case File◆心に残った症例
介護の道への転進を決意,道を拓いたS君,26歳に乾杯
宮崎 康
1
1みさと健和病院 内科
キーワード:
若年糖尿病
,
生きる
,
仕事
,
Solid Facts
,
支援
Keyword:
若年糖尿病
,
生きる
,
仕事
,
Solid Facts
,
支援
pp.103-105
発行日 2013年1月15日
Published Date 2013/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1415101455
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
2011年3月11日の未曾有の大震災・原発事故から1年10カ月になる.自らの命は長らえても,大切な人,家,土地,仕事,住み慣れた地域での生活を失った人は数知れない.多くの人たちがいまだに見通しの立たない状態におかれている.自ら命を絶った人を含め,事故後1年間で1,600人余りが震災関連死で亡くなっている.取り返しのつかない原発事故という人災を起こしながら,永年の「安全神話」の責任をとることなく,なお原発依存に拘泥する為政者,「原子力村」関係者に対するやり場のない怒りが渦巻いている.過去を失っただけではなく,将来への展望をなくしているのだ.義捐金・賠償金で生活している人が,テレビの報道画面ではき捨てるように話していた.「仕事もなくし,明日からの見通しもないのに,毎日パチンコで時間をつぶす以外,いったいどうしろというんだ」
これは生活保護を受けている患者さんからいつか聞いた言葉でもある.日頃の診察室から垣間見える患者さんのさまざまな困難.ましてや糖尿病をもつ若者にとって,現下の社会状況の下で,やりがいある安定した仕事を得て,病気とつきあいながら前向きに生きることは大変なことである.S君はそんな困難を克服して,今明るく楽しくがんばっている.そして,人が生きるのには何が必要か,私たちが心がけておくべきことは何かを教えてくれている.
Copyright © 2013, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.