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はじめに
肥満=脂肪組織の過剰蓄積=多彩な疾患の基盤になっていることは周知の事実である.これからの世界の健康政策として,先進国はもちろん,開発途上国の一部においても過栄養に対する対策が重要となっている1, 2).
近年,生活習慣病としてまとめられる一連の疾患は,動脈硬化症ひいては虚血性心疾患や脳血管障害の重要な危険因子であることが知られている.これらの危険因子の集積は,内臓脂肪症候群3)やメタボリック症候群(metabolic syndrome : MS)と表現され,内臓脂肪の蓄積がさまざまな代謝異常を複数併存させる原因となり,それぞれの異常は軽度であっても動脈硬化性疾患の頻度が指数関数的に高くなることが考えられている.また,それぞれの病態が互いに関連しあっているため,複数の危険因子を同時に管理していくことが必要であり,内臓肥満自体の改善も必須となる.
肥満は,単なる過体重ではなく,身体に脂肪組織が過剰に蓄積した状態として定義され,日本肥満学会では,BMI 25kg/m2以上を肥満と定義している.とくに,「肥満に起因ないし関連する健康障害を合併するか,合併の発生が十分予測される場合で,医学的に減量を必要とする病態」は肥満症と定義され,疾患として扱われる4).
すなわち,肥満と判定され,肥満に関連する健康障害(①糖尿病・耐糖能異常,②脂質代謝異常症,③高血圧,④高尿酸血症・痛風,⑤脂肪肝,⑥冠動脈疾患,⑦脳血管障害,⑧整形外科的疾患,⑨睡眠時無呼吸症候群,⑩月経異常,⑪肥満妊婦,⑫心理的サポートの必要な肥満症,のいずれか)を有するか,または,合併症を起こしやすい状態と考えられる内臓脂肪型肥満(内臓脂肪面積100cm2以上)を有するものは「肥満症」と定義される.肥満症は,生活習慣病の基礎疾患として認識されており,肥満症に介入することは,極めて効率のよい予防医学に結びつくと考えられる.
本稿では肥満症の食事療法についてVLCD(Very Low Calorie Diet)療法を中心に,症例も提示して概説したい.
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