JIM臨床画像コレクション
"幻の病"象皮症(Elephantiasis)
高岸 壽美
1
,
藤村 聡
2
1日本赤十字社和歌山医療センター看護部
2京都大学医学部附属病院総合診療部
pp.184
発行日 2002年2月15日
Published Date 2002/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414903473
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征韓論で有名な西郷隆盛は100kgを超す巨体と太い足の持ち主で,それゆえ馬に乗らず籠で移動していたといわれるが,実は馬に乗れなかったというのが真相と伝えられる.その原因は,フィラリアの一種であるパンクロフト糸状虫の寄生による巨大な陰嚢水腫により乗馬が困難であったといわれている.
パンクロフト糸状虫はヒトのリンパ管に生息し,精索部のリンパ管瘤が破裂すると陰嚢にリンパ液が溜まり陰嚢水腫になり,足の皮下組織ではリンパ管瘤が慢性的な刺激になり皮膚が肥厚しゾウの皮膚のようになり,いわゆる象皮症と呼ばれる状態になる.また興味深いことに,古来より,同居している親子,兄弟などで同様の症状が出現することが多いため,1877年,パンクロフト糸状虫が蚊により伝播される伝染病であることが判明するまで"遺伝病"と信じられていた.
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