Update '96
脳梗塞急性期の薬物治療とコストパフォーマンス
早川 功
1
1川崎市立井田病院神経内科
pp.903
発行日 1996年10月15日
Published Date 1996/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414901968
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①主幹動脈に閉塞性病変を有するアテローム血栓性脳梗塞.②branch atheromatous diseaseといわている多穿通枝領域の脳血栓.③単穿通枝の梗塞であるラクナ梗塞.これらの急性期の治療として,トロンボキサン合成酵素阻害薬であるオザグレルナトリウム4A (80mg)を1日2回約2週間の点滴静注が行われることが少なくない.その他に以前より,ウロキナーゼ6万単位を7日間点滴静注することもある.心原性脳塞栓症に対しては,ヘパリン3,000単位~5,000単位静注後,APTTを1.5~2倍を目安として,10,000~15,000単位の低用量を24時間点滴静注し,2週間以内にINR 1.5~3.0を目標値に経口薬(ワーファリン)に変更することが,適応例には積極的に行われるようになった.
さてその効果であるが,オザグレルやウロキナーゼ単独では,①,②における進行型の脳梗塞を阻止できず,これにヘパリンを加えても満足できる結果を得ることは少ない.これに対しラクナ梗塞では,発症早期に投与すれば機能予後は良いとされるが,本来ラクナ梗塞では十分な補液のみで多くの例で予後は良好である.心原性脳塞栓症における抗凝血療法は,再発予防を主体として十分に効果をあげているといえる.ここで,治療薬だけを1週間使用したときにかかる費用を単純計算とすると,オザグレルでは約14万円,ウロキナーゼでは約2万円となるが,ヘパリンでは約6千円となる.
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