JIM Report
阪神大震災における一医師の行動記録(2)
黒川 渡
1
1京都大学総合診療部
pp.468-470
発行日 1995年5月15日
Published Date 1995/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414901516
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■大学からの派遣隊への参加
筆者は1月25日,26日の2日間,京都大学派遺隊(20名)の一員として神戸市兵庫区に入った(後日聞いた話では,京都大学では震災翌日の18日に支援隊を組織したがその日には出発できなかったという.これは大学病院の中ではかなり迅速な対応であったと思う).われわれは午後5時に出発したが現地到着は午後2時過ぎであった.
筆者は会下山小学校に行った.そこは暖房もなく,人々は廊下や運動場にあふれていた.校舎のドアは人の出入りのため頻繁に開閉され,一階の廊下側部分は吹きさらしであった.そんな寒さにもかかわらず,身を震わせることを忘れたかのような虚ろな雰囲気を人々は漂わせていた.震災2日目に友人を探しに訪れた避難所の緊迫した光景とは大きな違いであった.強烈な震災の振動と阿鼻叫喚からなんとか脱出して約1週間,爆発的な緊張から解放された虚無と虚脱が避難所の空気を支配しているようだった.
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