特集 内科的治療か外科的治療か
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「肝細胞癌」―内科の立場から/「肝細胞癌」―外科の立場から
永田 博司
1
1東京都済生会中央病院内科
pp.240-241
発行日 1993年3月15日
Published Date 1993/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414900776
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佐藤論文には,肝癌の治療方針を決めるのに必要かつオーソドックスな考え方が示されている.読者はこれを参考に各自のdecision making chartを作ることが可能であろう.経皮的エタノール注入療法(PEIT)の長所は手技の非侵襲性であり,短所は腫瘍の非根治性と小さな腫瘍に限られることである.一方,肝切除術の長所は局所の根治性であり,短所は侵襲度の高さと残存肝における癌の再発の可能性である.肝動脈塞栓術(TAE)は多発性の腫瘍に有用である.以上の点からポイント部分に要約されている,肝癌の治療法の選択基準は極めて明確に理解できる.すなわち,腫瘍が小さく肝予備能が低下している例にはPEITが適応であり,腫瘍が限局性で肝予備能が良好な例には肝切除術が適応となる.提示された症例は径が2cm以上の限局性腫瘍で,肝予備能が良好であったので手術の適応であった.しかし,さらに肝予備能を詳細に検討した結果,手術ではなく,より侵襲度の低いTAEを選択した.このあたりが,臨床の難しさであり醍醐味でもある.治療法の選択については年齢,血管造影所見,残存肝における癌の存在の可能性,確定診断度,本人の意志など様々な角度からカンファレンスで検討する.さらに論点となるのは,肝癌が2cm以下で肝予備能が良好な例には,いずれの治療法を選択するかという問題である。従来は肝切除術の適応であったが,最近ではPEITを施行する施設もある.いずれの方法においても成績は良く,5年生存率が50%を越える報告も散見される.
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