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診察術の歴史・6 The Evolution of Physical Diagnosis
ラーゼスとペルシャの診察術
Rhazes and Persian Physical Diagnosis
Gude James K.
1,2
,
吉原 幸治郎
1
1佐賀医科大学総合診療部
2University of California-San Francisco
pp.633-635
発行日 1992年7月15日
Published Date 1992/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414900514
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ラーゼス―中世イスラム教時代の独創的な医療実践者
ラーゼス(860年~932年)は偉大なペルシャの臨床家であり,中世イスラム教時代における最も独創的な医療の実践者であった(図1).彼はバグダッドに住み,生涯で約230編の論文を書いているが,その多くは紛失し現存するものは少ない.医学史家ノイバーガーはラーゼスについて「彼はその医学的知識と診断および治療の技術により人々から大変尊敬されたが,晩年は不幸であり失明と失意の中で死んでいった」と述べている1).彼は医学に関する膨大な量の知識を集め,"EI Hawi"という百科事典を編纂した.この本は1279年ファラジ・サレムによりラテン語に翻訳され,1486年"Liber Continens"として北イタリアのブレチアで出版されたが,その重さはおよそ9kgに達するものであった.もう一つのラテン語の翻訳"Liber Ad Mansorem"は16世紀末までヨーロッパにおける最も基本的な医学の教科書として使用されていた.また,1935年マイヤーホフはこのアラビア語の本を英語に翻訳している2).ラーゼスは痘瘡と麻疹による発疹を明確に区別した論文で有名である.さらに,ラーゼスは様々な診察術に関する記載と同時に,33例の患者の病歴を残しており,これはヒポクラテスの"Epidemics"に含まれている病歴とともに当時の医学教育でしばしば引用された.
ラーゼスは麻疹と痘瘡における皮疹に関して実に見事な記載をしている.
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