Japanese
English
診察術の歴史・5 The Evolution of Physical Diagnosis
アレテウス(紀元前200年)と診断学
Aretaeus, Circa 200 A.D., and Physical Dignosis
James K.Gude
1,2
,
吉原 幸治郎
1
1佐賀医科大学総合診療部
2University of California-San Francisco
pp.438-439
発行日 1992年5月15日
Published Date 1992/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414900442
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アレテウスは紀元前2世紀頃にローマ帝国のカッパドキア地方(現在のトルコ)に住んでいた医師であった(図1).筆者は彼こそが古代における最も優れた臨床医であったと考える.Francis Adamsにより英訳された"The Extant Works of Aretaeus, the Cappadocian"1)には患者の病歴についての記載は認めないが,アレテウスが用いていた診察術が詳細に述べられている.しかし,彼の私生活についてはほとんど知られていない.
診察術の歴史の中でアレテウスは3つの大きな業績を残している.すなわち,1)腹水を診断するための打診所見である"shifting dullness",2)大動脈弁狭窄患者の血管雑音または心雑音に関する初めての記載,3)重篤な頭部外傷患者における対側の運動麻痺と脊髄損傷の際に生ずる同側の運動麻痺に関する記載である.アレテウスの鋭い臨床家としての観察眼はヒポクラテス集典の著者たちのそれを明らかに越えるものであったと思われる.
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