読者フォーラム
コレスポンデンス
立道 昌幸
1
1SONY健康管理室
pp.501-502
発行日 1991年8月15日
Published Date 1991/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414900154
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失神発作の鑑別―産業医の立場から
企業内の診療所では,失神の前兆とも考えうる意識障害を主訴として来院する頻度はかなり多く,私にとって"めまい"と同様頭の痛い訴えの一つである.教科書に記載されているあらゆる鑑別疾患を除外するのは一苦労(困難?)であり,まして症状が出現しているときに診察できるものは少ない.初診時身体的所見が認められるものはほとんどなく,多くの場合問診のみでこのまま経過観察すべきか,高次の検査のため専門医を紹介するべきなのかの選択を強いられているわけだが,失神の原因疾患が心臓と中枢神経系という主要臓器に関連しているため,なおさら神経をすり減らすのである.そんな自分に光明となる期待を持って今回の「JIM」の特集を読ませていただいた.
私の場合,現代のストレス社会にいる企業人を対象としているためか特に精神的原因でこのような愁訴の患者が多く,その中から器質的な疾患をいかに見落としなく除外できるかが問題となっている.ヒステリー発作は女性と相場はきまっていたが,最近では若い男性に多くなってきているし,不安発作において中年男性の頻度が増加しているのも厄介なことである.自験例で言えば,不安神経症をベースに迷走神経反射を起こす場合が最も多く,特に出勤時の通勤電車内で失神発作を起こすケースはほとんどこの機序によると思われる.ただし最近話題となっている過労死?の前兆に失神発作が多いことがあり慎重な病歴や生活習慣,精神身体状況の把握が必要であろう.
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