ミニテクニック
患者に激しい感情表現が見られたら(下)
原 健二
1
Kenji Hara
1
1自治医科大学地域医療学
pp.481
発行日 1991年8月15日
Published Date 1991/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414900148
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前号に引き続き,激しい感情表現をする患者に対応するためのミニテクニックということだが,簡単な手技で解決できないことは,諸兄の実感であろう.著者自身の小児科医,内科医としてのささやかな経験と文献から得たヒントとして読んで戴ければ幸である.
④泣き出す患者「言うことを聴かないとお医者さんに行って注射してもらいますよ.」と言われながら育てられた子は,白衣を見ただけで泣き出す.まず,「注射はしないよ.」と宣言してみよう.技術的には,しゃくり上げる一瞬に吸気音を聴取する.さらに泣かれてしまうような手技は後にした方が良い.小児科医としては,上記のように叱られて育てられることがない世界が訪れることを祈るのみだ.成人で泣き出す患者は場所を移して話を聴くことを考慮して欲しい.昭和の初期,日本にいたあるアメリカ入医師の話である,結核を患ってサナトリウムに入院していたある女性は悲嘆にくれながら日々を送っていた.手慰みに,編物をしていた彼女の姿を見かけて,その医師はやや粗野にこう励ましてくれたそうである.「楽しみのためにそんなことをしていても社会復帰はできない.もし売物になる程立派なものができるようになったら,俺が最初に買ってやる.頑張れ.」この女性は医療の何たるかを教えられ,間もなく快方に向かい退院した.
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