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Case
症例:74歳,男性(独居生活)
既往歴:糖尿病
現病歴:両側の変形性膝関節症による歩行困難のため,かかりつけ医(内科)が総合病院整形外科を紹介,両側人工膝関節全置換術,リハビリテーションを目的に入院加療.術後は,院内歩行器歩行レベルであったが,退院後は屋内生活が主となり,車椅子生活であった.退院時には,整形外科の主治医から「家でリハをするように」とだけ指示を受け,患者本人は,「いつかは歩けるだろう」との認識で生活を送っていた.
問題点
1)退院時に主治医から「リハ」の具体的指導,また,かかりつけ医からも具体的な「リハ」の指導はなかった.
2)入院先のリハスタッフからは,運動療法を主とした退院時指導はあったが,生活のなかに習慣化されておらず,実施・定着されていなかった.
3)介護保険における訪問介護,訪問看護サービスは導入されたものの,患者本人のできないことへの支援のみに着眼しており,自立支援への視点が見出せていなかった.
経過
1)介護支援専門員がかかりつけ医に相談,リハの指示を相談,指示書が交付され,訪問看護ステーションから理学療法士の訪問が開始された.
2)理学療法士の初回訪問時,屋内移動は車椅子を主としていたが,歩行器歩行能力は有していた.そのため,活動性低下による両下肢の筋力低下が生じ,筋力増強,関節可動域拡大とともに,生活の再建を目標に運動療法および生活指導,外出支援を中心にリハプログラムを計画,実施した.
3)訪問介護,訪問看護スタッフにもケアに取り込めるリハをアドバイスし,協働して患者本人の生活自立の目標を共有しながらアプローチをしていった.
結果
屋外への出入り,歩行器による屋外歩行,買物,外食など自立し,術前同様の独居生活を送れるようになる.訪問看護・リハビリは,目標達成した後に終了し,それに合わせて通所介護を導入,訪問介護は,訪問頻度を減少しつつ生活の自立の支援を目標に介入を継続.
患者本人は,「リハ」とは,運動療法の継続,生活活動の機会を確保することであることを自覚し,生活の中で習慣化するようになった.そして,現在,術前より膝の痛みにより制限されていた活動範囲も広がり,本人の満足感を達成することができた.
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