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悪性腫瘍による古典的不明熱には,どのような疾患が知られているか?
悪性腫瘍は,古典的不明熱の定義を満たす主要な3つのカテゴリー(感染症,膠原病,悪性腫瘍)の一つとされている.しかし,表1に示すように,1960年代までは20%程度を占める主要な原因だったが,近年になると10%程度に減少していることがわかる.1970年代以降にCT,MRI,エコーが臨床導入されてからは,より早期に診断可能な場合が増えてきているためと思われる.画像診断の発達に伴い,もはや不明熱の原因としての経過をたどる前に診断が可能になっている例として,不明な発熱で古典的に注目されていた腎癌がある.1930年代での報告では,原因不明の発熱で後に腫瘍とわかったものでは,血液悪性腫瘍を除くと腎癌の報告が多かった.傍腫瘍症候現象のため,多彩な症状が起こり腎由来とは思えない症状をきたすことが知られ,腎癌での発熱は17%程度に起こるとされている.ゆえにInternist's tumor(内科医の腫瘍)と呼ばれてきた.しかし,現在では無症状の腎癌がCTで診断されることのほうが多くなっていて,発熱の鑑別疾患にあがることが減ってきており,もはやRadiologist's tumorとも呼ばれる1).腎癌や肝癌,膵癌はケースシリーズとして不明熱の代表的な固形癌として記載されるが,実際にはそれほど多いものではない.100例以上の癌を集めた報告例では,腎癌で発熱するのは6~8%程度であり,膵癌では0.9%という報告もされている2).
表1からも,固形癌が不明熱の定義をきたすことは現在では比較的まれであり,頻度からは血液悪性腫瘍が占める割合が多く,そのなかでも悪性リンパ腫が重要であることがわかる.悪性腫瘍による不明熱を疑うときには,表1にあげられている疾患のリストを想起するとよい.
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