Editorial
21世紀の不明熱診療に真摯に向き合う
岸田 直樹
1
1手稲渓仁会病院総合内科・感染症科
pp.449
発行日 2013年6月15日
Published Date 2013/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414102865
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不明熱診療はとても難しい.一生懸命,丁寧に病歴や身体所見をとり,吟味した検査を行っても診断がつかない.難しい,なんでこんなに難しいのであろうか.みる医師がかわると途端に診断がつくという症例もなくはない.しかし,真の不明熱(本特集ではこれを「横綱級不明熱」と呼んでいる)は「3次医療機関の総合医として自分がかかわったとしても,患者さんに何かできることは多くはないかもしれない」と弱気にすらなってしまうこともある.近年の不明熱診療では,このようなことが起こりやすくなっており,これこそ21世紀の不明熱診療の特徴であることは間違いなさそうである.
熱の原因がわからない状態が長引くと患者さん,家族,医療者ともに負のスパイラルに突入する.患者さんは診断がつかない,熱が下がらないことで抑鬱となり,診療を拒否するようになる.また,熱に伴う消耗により検査困難となってしまったり,長引く多数の医療介入により当初とは別の合併症が加わり二次感染なども起こし病態の修飾が起こる.家族も医療不信となり,診療拒否となりうる.医師はなんとか患者さんをよくしたいと藁にもすがる思いで過剰検査や見切り発車での過剰治療となることもある.しまいには,ベッドサイドへ行かなくなってきたり,新しい発見ばかり求めて自らの診療をレビューしないなどといったことになってしまう.そして微妙な陽性所見に振り回される,稀なものに走る…….
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