異端とグローバルスタンダード アメリカ医療はどこへ行くのか?・4
ACAの2本柱
森井 大一
1
1エモリー大学公衆衛生大学院医療政策&マネジメント学科
pp.340-342
発行日 2013年4月15日
Published Date 2013/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414102818
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保険加入の相談所“エクスチェンジ”
たとえば,きゅうりと医療保険.一つの通りに八百屋が何軒かあって,あっちのきゅうりとこっちのきゅうりを見比べて,つやがよさそうなほうを買うのもよし,値段が安いほうを買うのもよし.もし,家にレタスとトマトがあれば,敢えてきゅうりを買う必要すらないかもしれない.しかし,医療保険は,そもそも「なしで済ます」べきではない.少なくとも,きゅうりよりはそうだ.
ACA(Affordable Care Act,オバマ政権の医療改革法)は医療保険に加入することをほぼ全ての国民に義務付けた.もし加入しないことを選べば,(例外はあるが)$695(≒6万円)のペナルティーを払った上で,無保険になる.保険プランは星の数ほどあり,個人により疾病リスクも様々で,どういった保険が必要かは変わる.値段も加入条件ももちろん多種多様.自分に最適の保険を見つけ出すのは容易ではない.しかも,それを売る人たち(=保険会社)はみなプロだ.たとえば34歳の男性(高血圧の薬を毎朝飲んでいる)に,向こう一年間でどれぐらいの医療費がかかるかについてとても詳しい知識を持っている.買う側と売る側の情報量の開きはあまりに大きい.それは,がま口を持たされて使いにでた子どもと八百屋の店主の差よりもはるかに大きい.
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