構造と診断 ゼロからの診断学・8
誤診から学ぶという話
岩田 健太郎
1
1神戸大学医学部感染症内科
pp.888-893
発行日 2010年11月15日
Published Date 2010/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414102041
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
内省とはつらくて孤独で含羞を伴うもの
■誤診をした.それもやってはならない,どうしようもない誤診だった.隣に窓でもあったら飛び降りたくなるような,拳銃でもあったら口に突っ込んで引き金を引きたくなるような誤診だった.後で診た救急の先生がさくっと診断して治してくださったことくらいが救いと言えば救いだった.しかし,そのありがたい先生にぼくの間抜けなカルテを見られた,という事実もあまりきまりがよいものではなかった.ぼくには少なからぬ虚栄心があり,その見栄が(患者を余計に苦しめた良心の呵責と同じかそれ以上に)自分を苦しめているのだということも自覚した.
■内省的学習,reflective learning,なんてかっこのよい言葉があるが,現実には「真の」内省的学習はこのように惨めでかっこわるいものである.だから内省的学習をしましょう,なんて明るく堂々と喧伝する感覚が理解できない.内省は大事なことだが,人前で喧伝したりおおっぴらに行うものではない(また,できるものでもない).「さあ,みなさんもごいっしょに,リフレクティブ・ラーニングウ!!! いち,にのさん!」なんて感じでやるものではない.
![](/cover/first?img=mf.1414102041.png)
Copyright © 2010, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.