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新しい薬ができるまで
医薬品は内科医にとっては外科医のメスに相当する要となるツールである.薬なしに病気に立ち向かうのは困難である.毎年,新しい治療薬が数十,承認され,同時に新しい薬の候補が生まれるが,市場に出てくる割合は驚くほど低い.2004~2008年の5年間に国内企業が薬の候補として合成(抽出)された化合物は611,576あった.化合物の構造や性状を調べる基礎研究に2~3年かかり,薬の候補は動物や細胞を用いて新規物質の有効性と安全性が検討する非臨床試験が行われ,ヒトを対象とした臨床試験(治験)が3~7年程度かかって申請資料が厚生労働省に提出され,最終的には,24の新しい薬となっている(図1).同じ期間に非臨床試験が開始されたのは199,臨床試験が開始されたのは81で承認申請がされたのが24なので,薬の候補として研究が始まった化合物が新薬として世に出るまでに9~17年かかる.その年月と成功確率25,482分の1の賜物である.
臨床試験はまず,少数の健康成人を対象に単回投与,必要に応じて複数回投与され,安全性とともに薬物動態が検討される(第Ⅰ相).少数の被験者(患者さん)を対象に薬の有効性と安全性が確認される(第Ⅱ相).薬の期待される効果が証明されることをProof of concept(POC)とされ,この段階までで開発が中止されることが多い.第Ⅱ相で有効性が期待される投与方法・量が決まってくると,多くの被験者を対象に第Ⅲ相試験が行われる.まったく新しい機序の薬ではプラセボとの比較試験が行われるが,既存薬(標準薬)がある場合には標準薬との比較試験も行われる.最近は国際共同治験として全世界で同時に10,000例規模の臨床試験が行われるようになってきた.
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