感染症が見える! グラム染色に基づく抗菌薬療法[21]
グラム染色で起因菌がはっきりしない肺炎
谷口 智宏
1
,
喜舎場 朝和
2
1大阪医療センター免疫感染症科
2元沖縄県立中部病院内科
pp.720-724
発行日 2008年9月15日
Published Date 2008/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414101497
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
症例:76歳の女性,軽度の認知症あり.
主訴:発熱.
【現病歴】数カ月前から時々湿性咳嗽があった.来院前日から元気がなく,食欲低下と38.0℃の発熱を認めたため,家族に連れられて救急外来を受診した.
【既往歴】腰椎圧迫骨折にて車椅子使用.陳旧性肺結核(30年前治療歴あり).アレルギーなし.内服薬なし.
【生活歴】飲酒・喫煙なし.
【身体所見】身長143cm,体重34kg.バイタルサイン;血圧140/70mmHg,脈拍100/分,呼吸数24/分,体温37.9℃,SpO2 96%(室内気).全身状態;家に帰るといって落ち着かず.頭頸部;貧血・黄疸なし,頸部リンパ節腫脹なし.胸部;喘鳴(wheeze)・湿性ラ音(crackle)なし.心音;整,心雑音なし.腹部;平坦軟,圧痛なし.背部;CVA(肋骨脊椎角)叩打痛なし,腰椎に軽度圧痛あり.
【検査所見】血液検査;WBC 6,900/μl,Hb 11g/dl,Hct 34%,Plt 41×104/μl,Na 132mEq/l,K 3.7mEq/l,Cl 98mEq/l,BUN 12mg/dl,Cr 0.5mg/dl,Glu 84mg/dl,AST 13IU/l,ALT 5IU/l,CRP 8mg/dl.
尿検査;糖-,蛋白+,ケトン-,潜血3+,赤血球1~4/HPF,白血球10~19/HPF,菌なし.
胸部X線;右上中肺野に浸潤影あり(図1).
喀痰グラム染色(喀出できず吸引して採取);肉眼所見は白色,鏡検では弱拡大にて上皮細胞を中等量認め(図2),強拡大にて多核白血球(PMN)1+と矢印の菌を1+認める(図3).
Copyright © 2008, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.