特集 疾患・治療概念の最近の変化
【診断・検査】
慢性腎臓病の概念とGFR予測値の利用
小松 康宏
1
1聖路加国際病院腎臓内科
キーワード:
慢性腎臓病(chronic kidney disease)
,
GFR予測式
,
血清Cr値
Keyword:
慢性腎臓病(chronic kidney disease)
,
GFR予測式
,
血清Cr値
pp.650-652
発行日 2007年8月15日
Published Date 2007/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414101186
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Case
患者:65歳女性.
既往歴:10年前に糖尿病,高血圧と診断され降圧薬(アンギオテンシン変換酵素阻害薬)を内服中.
現病歴:健診で蛋白尿が陽性であることを指摘され,腎臓内科を受診するようにいわれていたが放置していた.知人から「スイカは腎臓に良い」と聞いたので,一昨日から毎日スイカを2個食べていた.本日朝から倦怠感と手足の脱力が出現したため救急外来を受診した.
意識清明,全身状態比較的良好.血圧145/90mmHg,脈拍72/分.身体理学所見に大きな異常を認めないが,四肢の筋力が軽度低下.血液検査はTP 7.0g/dl, Alb 4.0g/dl, BUN 20mg/dl, Cr 1.5mg/dl, Na 140mEq/l, K 6.5mEq/l, Cl 105mEq/l, 血糖 120mg/dl.心電図は洞調律,T波の尖高を認めた.高カリウム血症と診断し,治療を開始した.
65歳女性で血清Cr 1.5mg/dl(酵素法で測定)の推定GFRは約25ml/min/1.73m2である.血清Cr値からはそれほど腎機能が低下していると感じられないかもしれないが,高度に腎機能が低下している状態である.糖尿病患者では皮質集合管でのK分泌も障害されやすく,K負荷,ACE阻害薬,アンギオテンシン受容体拮抗薬などを使用した場合に高カリウム血症となることがあるので注意が必要である.この症例は,心血管疾患のハイリスク患者であると同時に将来透析を必要とする可能性が高い.K制限を指導したうえでACE阻害薬,ARBを含めた降圧療法を行い,慢性腎臓病に対する総合的な診療を継続する必要がある.
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