再評価後の漢方治療入門―もう一度随証治療・2
人参湯と真武湯
坂口 佳司
1
1坂口循環器科内科医院
pp.165-169
発行日 1999年2月15日
Published Date 1999/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414902666
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
漢方の得意領域とでもいうべきものは,急性熱性疾患とその後の治療,消化器疾患の治療,整形外科領域および婦人科領域かと思われる.とくに,今から三千年も前の中国の社会では,消化管の異常に対する治療の需要が多かったのではないかと思われる.
今回は,これらの漢方の得意分野の中で「下痢」の治療を取り上げてみたいと思うが,下痢症状に対して運用される漢方処方は,瀉心湯類(J1),人参湯,真武湯,桂枝人参湯,四逆湯,葛根湯,五苓散,大柴胡湯など少なくはなく1),それぞれの処方の使い分け方について理解するのも必ずしも容易ではない.また,現代医学的にも種々の止痢薬,整腸剤などが使用に供されており,「何故今,下痢に漢方か」という疑問のあることも当然かと思う.現代医学的な止痢薬は抗コリン薬やロペラマイドに代表されるように,文字どおり「止痢=下痢を止める」ことを目的とするのであって,下痢の原因となる病態は,止痢とは別の治療を行うか,止めている間に治ってしまうことを期待するものと理解される.
Copyright © 1999, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.